1/27擬人化王国6で配布した、新潟組のお話です。羽越×信越+新潟組フルメンバー。なぜか白新たんがちったいですが、作者及び元ネタ主様の趣味なので仕方ない☆
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ニイガタファミリア
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「うえちゅ!」
背後から声をかけられ、羽越は振り向いた。
とてとてぽて、という擬音が聞こえるような仕草で小さき者が駆け寄ってくる。ピンク色の服に、明るい色の髪を前半分を左サイドに結わいている、白新線だ。
「どうした? 白新」
「うえちゅー、ちゅー!」
身を屈めれば、小さな唇を突き出して白新が顔を近づける。頬に一瞬だけやわらかなものが触れて、離れた。
これは相好も崩れようと言うものだ。
「なんだ白新、今日は可愛いなぁ~!」
ぎゅ、と抱きしめてお返しとばかり、小さな頭にグリグリ顔を押しつけると、痛い苦しいと文句が返った。
「何やってるの? 羽越、扱い荒いなぁ……」
聞こえた声に、白新はもちろん、羽越も顔を輝かせる。越後か上越あたりが見たら、大犬子犬……とでも呟いたかもしれない。
羽越の腕から出ようともがく白新を、羽越は床に下ろしてやった。白新が今度は信越に抱きつく。
「しんえちゅ! ちゅー!」
「か、可愛い……!! ちゅー♪」
目の中にハートが見える、とはこういうのを言うのだろう。信越はしゃがみ込んで白新を抱きしめ、頬にキスをもらって自分も返した。そのまま何度かキスの応酬をしている。
とても可愛い光景だが、ちょっと面白くない。
むっとした気配を感じたわけでもないだろうが、信越は白新を離して立ち上がった。
きらきらした目が羽越を見上げる。
「うーえつ、ちゅー♪」
思わず羽越は後ずさった。
「な、なんだお前……、どうし…」
とたんに信越の顔がしかめられる。
「羽越のばかぁ~!」
「えっ? あ、おい……っ?」
「羽越のばーか!」
げし、と向こう臑に蹴りが入った。
「イッ……ッテェ……」
たまらずかがみ込めば、白新が仁王立ちをしている。
「羽越は馬鹿だな! ヘタレだな!」
「馬鹿でもヘタレでもなかったら羽越じゃないだろ」
新しい声が降ってきて、顔を上げれば、越後が無表情に見下ろしていた。
「越後お前……」
酷い言いぐさだ。ていうかいつから居たのか。
「アイツ、八十年代少女マンガのヒロインみたいなノリで駆けてったけど、追わなくて良いのか?」
「よ、良くない!」
慌てて立ち上がり、信越を追って走り始める。
背後の声は、羽越には届かなかった。
「えちごー、昼ドラ!」
「昼ドラっていうより安っぽいメロドラマ? まぁあの二人だからな……」
「ほんとに。絵にならないよねぇ……」
「――上官?」
いつからいたのか、柱の影から現れた上官は、カメラを手に持ったまま、わざとらしく肩を竦めた。
控え室の扉を開けると、信越が一人、さめざめと泣いていた。
「信越……? あー……と、その、ごめん……?」
「なんで疑問系なの」
「いや、その、……――ごめん……」
許して欲しい?と尋ねる信越の表情に、俯いている羽越は気づいていない。
「そりゃあ! ……って、お前嘘泣きかよ!」
「泣くわけないじゃないこれくらいで」
「なんっだよ……! ――はぁ……焦った……」
床にへたり込んでため息をつくと、信越は小さく笑って近づいてきた。目の前でしゃがんで首を傾げる。
「許して欲しい?」
「怒ってねぇんだろ?」
「ちょっとは怒ってる。いや、拗ねてるかな?」
「は? 拗ね……? なんで……」
「なんでって、あの状況で、原因なんかひとつしかないでしょ」
「へぁ? ――ああ……だっていきなりあんなこと言われたらビビるだろ。ふたりっきりの時だって滅多にないのに!」
「白新にはちゅーしてた。嬉しそうに鼻の下伸ばしてた」
「お前だってしてただろ! つか伸ばしてねぇよ!」
反射的に返してから、羽越はやっと気がついた。
「え……」
ふい、と信越が顔を背ける。
「え? お前、まさか、嫉妬……?」
「羽越のばぁーか!」
「なんっだよお前らさっきから……!!」
「だってほんとに馬鹿なんだもん」
抱きついてきた信越を、羽越はよろけず受け止めた。
「羽越、ちゅ」
頬に触れた温もりが、身体の奥で倍の熱になる。
「……顔赤いよ?」
「お前だって……」
頬に口づけを返せば、そこもやはりいつもより熱く、羽越はたまらなくなってマフラーの巻かれた首すじに顔を潜らせた。
「っちょ、ちょっと羽越! ココどこだと……!」
「――控え室だな、職場だな」
不意に上空から降ってきた声に、二人揃って顔を上げれば、そこにはもうひとりの空色を纏う路線が居た。
「何やってんだこのあほんせん共が!!」
脳天に拳骨を食らわせ悶絶させて、上越はそのまま踵を返し出て行ってしまう。
「ッテェ……な……何しに来たんだアイツ……」
「あー……そういえば打ち合わせって言ってたなー……」
「忘れんなそんなん! 早よ行け!」
「いや、ここで」
「ここかよ!」
つまりは羽越が邪魔者らしい。
服の汚れを払いながら立ち上がる。信越も立ち上がり、大きく伸びをした。
「じゃあ、オレ行くから、ちゃんと仕事しろよ」
「羽越もね」
「おう」
軽く手を挙げて返し、扉に手をかける。と、信越に呼び止められた。
振り返れば、悪戯めいた眼差し。
「あとで、ね?」
「!? ――お、おう……」
ぎくしゃくとうなずけば笑われる。
ひとつ大きく深呼吸をしてから扉を開けると、上越が壁に寄り掛かっていた。呆れた様子を隠しもしない。
「羽越のばーか」
「お前も言うか……!」
「よくもまぁ、未だにアイツの言動に振り回され続けられるな」
「何だよそれ……」
「話半分で充分だろ、ってこと。いちいち真に受けて、一喜一憂して忙しいことだな」
「うるせぇ。余計なお世話だ」
「……違いない」
小さく笑い、上越は片手を上げて羽越を追い払う仕草をすると、控え室の中に戻っていった。
ひとり残された廊下で羽越は小さく息を吐く。
「さーてっと。オレも仕事に戻るか」
今日は遅延がないと良いなぁ。
伸びをしながら独りごちて、ホームへと歩き出した。
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信越さんが妙におとめくさくなりました☆ おっかしいな……。
羽越が皆に「羽越のばーか」言われてるのは仕様です。むしろ様式美です。
そしてうちの白新たんは、ちったくなってもやっぱり凶暴でした……ww
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